映像制作会社でのプロデュース部や制作部の経験のない映像クリエーターへ映像制作を依頼すると、想像より自社の手数が増えます。企画は自分たちで考え、素材を集め、上層部からの修正指示をとりまとめ、SNS用の動画は自社内で片手間に進める。さらに規模が大きくなると、出演者を自分たちで選び、衣装を集め、撮影場所も自分たちで探し、撮影許可をとる。撮影当日はざっくりとした時間割で、想定外のことが頻発し、対応に追われる。作る人に頼んだのに、まとめていたのは自分たちだった。手元に残ったのはコストのかかった動画のみ。この動画をどう活用するかは自分たちで考える。この状態がもっともコストがかかります。
私は、目的を伺う段階から入って、構成を一緒に決め、撮影し、編集して納品します。進行管理も制作も同じ人間が担当するので、間をつなぐ作業が発生しません。本編とSNS用の展開も、最初の設計に含めて組みます。
これができるのは、テレビコマーシャル制作会社で進行と予算を管理する側を経験し、Web動画の興隆期に徐々に作る側を同時進行したからです。
私はテレビコマーシャル制作会社のプロダクションマネージャーからキャリアを始めました。監督と各部門(撮影、照明、特機、メイク、衣装、美術、音楽、CG・VFX)の間に立ち、キャストとマネージャーを含む全体の調整。ギャラ交渉と実効予算管理、スケジュール管理、ロケ地とスタジオの確保。約6年、現場が止まらないようにすることと、利益を残すことを同時にやっていました。
その後、アシスタントプロデューサーを経てプロデューサーになりました。CMの制作は、広告代理店のクリエイティブディレクター、プランナー、監督、各部門のスタッフという、強い専門家が並んで進みます。プロデューサーの仕事は、その間に立って、どちらにも寄らずに場を成立させることでした。
後半は、代理店を介さない直クライアントの仕事を多く担当しました。外資ブランドの案件では、先方経営層との打ち合わせが英語で行われることや海外ロケも多く、先方への英文での連絡や、海外キャスト・海外ロケの現地スタッフとのやり取りは、自分で行っていました。一方で、2013年頃、Web動画が一気に広がったときに、新しいフィールドに魅力を感じ、自分で企画して自分で演出、撮影(映像と写真の両方)、編集する道を本格的に走り始めました。以来、プロデュースとディレクションを分けずにやっています。
次の勤務先の、Web媒体をメインとした配信・制作会社での6年半は、企画コンペから担当し、コンセプト設計から、撮影・編集・納品までを一貫して担当しました。カメラマン、アニメーション、イラスト、CGなど自分で手が回らない領域は、都度適任を探してチームを組んでいました。この勤務先では上流の企画構成にまず参加することでクライアントが求めているブランディング(採用を含む)や株主へのプレゼンスなど役員が求めていることを映像を通して言語化、ビジュアル化しました。同時に受け手であるユーザーのベネフィットを視聴者目線で表現してきました。そして、品質のいい動画を作るだけでは意味がなく、それをどう広告運用もしくはSNS運用していくか、どう認知してもらい、どう態度変容させていくか、WebやパンフレットなどのメディアミックスでKPIなどを追って他部署との連携していく環境でもありました。
上流だけを担当して実制作を外に出す道もありましたが、選びませんでした。フリーランスになった後、以前の上司から「プロデューサーとして入ってほしい」と声をかけていただいたときも、お断りしました。作ることと、「作れる状態」をつくることを分けたくない。これは映像制作に対する自分のスタイルであり、選択です。これが自分に一番しっくりくる土俵なのです。
分けないことの利点は、意図がズレないことです。企画を書いた人間が現場に立ち、次のアクションを現場で判断し、そのまま編集します。伝達の欠落も、意図の取り違いも起きません。企画書に書いたことに、最後まで責任を持てます。
現在は、企業プロモーション、WebCM、ショートドラマ、ミュージックビデオなどを、企画構成から撮影・編集まで担当しています。スチール写真(店舗、プロフィール、ファッション、ジャケット)も同じ体制で両方を自分が対応できるので、案件によっては、ムービーとスチールを別に手配する必要がありません。
もう一つご安心いただきたいのは、映像制作でトラブルが起きるのは、撮影や編集の技術が足りないときではないということです。許可が取れていない、人が揃わない、素材が足りない、権利の処理が漏れている。ほとんどは現場の手前で決まります。CMの現場で最初に覚えたのはこの順序でした。だから、撮影の前に潰しておくことを先に潰します。
発注される方にとって大事なのは、やってみないと分からないことを減らすことだと思っています。何をやり、何をやらないか。どこまでが私の責任で、どこからがお客様の責任か。追加が発生するのはどんなときか。着手前に合意して進めます。
対応領域
| 領域 | できること | どこで身につけたか |
|---|---|---|
| 作るCREATIVE | コンセプト設計、企画構成、演出、撮影、編集 | テレビコマーシャル制作会社にて映像ディレクション(約2年) → 配信・制作会社にてコンセプト設計・企画構成・演出(6年半) |
| 事業として成り立たせるPRODUCE | 見積と座組み、利益の確保、リスクの線引き、代理店・監督・スタッフの間に立つ調整。直クライアント(外資ブランド)案件・海外ロケの進行 | テレビコマーシャル制作会社・アシスタントプロデューサー(3年) → CMプロデューサー(3年) |
| 現場を成立させるPRODUCTION | 各部門(撮影・照明・特機・メイク・衣装・美術・音楽・CG)の編成と現場の統制、キャスト・マネージャー対応、ギャラ交渉と実効予算管理、スケジュール管理、ロケ地・スタジオ確保 | テレビコマーシャル制作会社でプロダクションマネージャー(約6年) |
この3つは通常、別の人間が分担します。私は分けずに、3つとも自分で担当します。

